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乳癌診療の今後の展望について

乳腺外科医長 柚本俊一
放射線技師 前田由紀

 

当院では2015年8月、患者様により優しく快適なマンモグラフィ検査を提供することを目的として、県内初となるトモシンセシス機能(断層撮影)を有する、富士フイルム社製「AMULETInnovality」を導入しました。
装置の特徴としてHCP構造のフラットパネルを使用し画像収集を行うことで高精細画像が得られ、トモシンセシス機能により、X線管球を移動しながら連続的に低線量でX線を照射、複数の位置から撮影した画像を再構成し断層像を生成することが出来ます。
この断層像により、従来の撮影では乳腺構造の重なりのために発見が難しかった病変が観察できるようになりました。
乳房の圧迫板に関しても、「FS(Fit-Sweet)圧迫板」を使用することにより優しく乳房全体にフィットすることで、圧力が分散され乳房全体を広げて固定でき、小乳房の方には専用の圧迫板を用いることにより、患者様の負担を軽減できるようになりました。
新型マンモグラフィ装置
新型マンモグラフィ装置
「AMULET Innovality」

乳癌治療成績の向上を目指して

乳癌は現在日本では年間8万人以上が発症し1万3千人以上の方が不幸にも亡くなっています。患者数は増加しており、残念ながら死亡率の減少にはまだ至っていません。山梨でも患者数、死亡者数とも増えています。当院で手術を受けられた患者様の数もここ20年間で実に10倍以上に増加してきています。
更に問題なのは乳がんは40代から50代の女性に多く、比較的若年層に発症する癌である事です。
この年代は仕事や、子育て、家庭の主婦として社会の重要な役割を担っている方たちです。このような方が癌で倒れることは社会的にも大きな問題だと思います。乳癌で亡くなる方を減らすことは急務です。
それには何と言っても早期発見です。そしてそれには検診の拡充と診断精度の向上が不可欠です。

 

当院では早くから乳がん検診の充実を地域自治体と共に進めてまいりました。
最近では検診の重要性の理解も得られ企業でも乳がん検診を行う企業が増えています。
乳腺外来での検診、人間ドックやマンモグラフィ巡回バスによる出張検診などで年間5,000件以上のマンモグラフィ検診および2,000件以上のエコー検診を行っています。
さらに2016年度からは予約枠を設けた検診を行うことを検討しており、受診者のさらなる利便性の向上をはかり受診率の増加につなげたいと考えています。

 

さて次に検診で要精検となった場合はどうでしょう?当院の乳腺外来は週五日、終日行っており多くの方が受診しやすい環境を考えています。
実際の検診では1,000人の方が受診すると当院の精検率は約6%ですから60人の方が要精検となります。その中で乳がんの方は3人弱です。
怖がらずに検査を受けていただくことが重要です。

 

新しい革新的なマンモグラフィ装置について
当院では、検診後の精密検査や外来診療に来られた患者様に対して、医師の判断で必要とされる患者様に対しては超音波診断とマンモグラフィ(トモシンセシス機能を用いた2D+断層画像)を二方向撮影して、乳腺外科医による読影を行っております。
読影に関しては高精細モニタに乳腺専用の読影端末を使用しております。
撮影は今までのマンモグラフィ撮影に数秒余計に時間が掛かるだけで行うことができます。トモシンセシス撮影が従来のマンモグラフィ撮影より優れている点は感度および特異度が向上することです。
すなわち、より小さく微細な病変も発見できる一方、偽陽性(何も無かったり、本来は良性なのに悪性疑いだと判断してしまうこと。この結果不必要な組織検査や経過観察が行われてしまう検診の負の面です。)の減少も実現できます。
このように精度の高い検査を簡便に行うことが可能となり、より一層信頼でき安心できる検査が提供出来ると考えています。
しかもこの検査で発見される癌は小さな浸潤癌が多く、これらをより早期に発見できる事は生命予後の改善に寄与すると考えられます。
断層撮影により重なりを排除断層撮影により重なりを排除し、層別に像を確認できる
これに加えて我々は以前よりマンモグラフィを用いてステレオガイド下マンモトーム生検を行ってまいりました。
これはエコーでは発見できない石灰化病変をステレオ撮影を行いマンモグラフィ下に組織を採取する方法ですが、新しい装置ではトモシンセシスの画像をガイドに組織を採取できるようになりました。
これは世界的にも新しい方法で直感的に確実に病変へアプローチでき、検査時間(すなわち患者様にとっては辛い時間)が大幅に短縮できるようになりました。
他にも現在、当院では高出力MRIやMD-CTなど高機能な診断機器を用いより精度の高い診断が可能となっています。
従来画像との比較放射状のスピキュラを伴う癌が鮮明に描出されている

乳癌治療に対するサポーティブケアと今後の展望

患者様には様々な悩みがあります。医療に関係することから私的なことまで、ともすればこれが治療の大きな妨げになることもあります。
当院では臨床心理士緩和ケアスタッフ、リハビリ療法士などパラメディカルの助けも十分に得ることができます。
これに加えて2015度9月よりピアサポートと云って乳がんの体験者による相談時間を設けることが出来るようになりました。仕事のことや家族や周囲の人々との関係の悩みなどを相談することで治療に前向きに取り組むことができるようになったという声を頂いております。
また“女性の外来”として婦人科とタイアップしたレディース外来や、当院での乳房再建術の施術など今後の課題として現在検討しております。

 

私たちは診療の最初から永い時間を患者様に寄り添いながら、多くの患者様が完治し平穏に暮らせるよう乳癌診療のあらゆる場面で患者様をサポートすることを目指しています。

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