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山梨県病院薬剤師会会誌執筆

褥瘡の適切な薬物療法(褥瘡学会参加報告)

山梨厚生病院 薬局 朝倉寛達

 

第17回 日本褥瘡学会学術集会 「先進的褥瘡研究の推進」

期間:平成27年8月28日(金)~ 8月29日(土)

場所:仙台国際センター 宮城県仙台市

 

今回の学会出張は、当院の皮膚・排泄ケア認定看護師など他職種の職員と参加してきました。褥瘡に携わる職員と共に学ぶことで、病態評価や薬物療法テクニックなどの知識の共有ができ、今後の活動への結束と意欲を高めることができた実りのある学会参加でした。

 

 

 

毎年の参加者は全体で約6500名、医師・看護師・薬剤師・介護職員・栄養士・リハビリなどの多職種の医療者が集まる学術集会です。各職種による研究成果の学術発表や、多職種によるシンポジウムを講聴することで、褥瘡という疾患の治療や予防には、多角的なアプローチが必要であることを実感しました。

今回の学術集会での薬剤師の活躍は、実行委員をはじめ、一般演題:口演(10演題)・ポスター(9演題)、シンポジスト(2セッション3名)、ワークショップ(2セッション2名)と様々なところで力を発揮していました。

 

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【教育講演】

<その壱:皮膚の構造と機能がわかる>

<その弐:褥瘡発生のメカニズムと創傷治癒(ずれ、圧、動的・静的外的を含む)>

褥瘡学術集会では、毎回基礎的な内容の講演が盛り込まれ、講聴することで基本に立ち返ることができて大変役に立ちます。

今回の講演では、皮膚を構成する各層の役割について図解による説明があり、褥瘡の深さ評価や治癒過程について理解が深まりました。

また、褥瘡の発生メカニズムや予防についても学びました。褥瘡の発生には、圧迫による血流の途絶が関係しています。血流の途絶時間に比例して褥瘡発生リスクが高まること(圧×時間)。そこにズレ力が加わると血管が細められ、さらに血流が弱くなること(圧×時間×ずれ)。そしてさらに、骨突出があるとより高リスクになり、壊死の拡大につながります(圧×時間×ずれ×骨突出)。血流の途絶を解除するためには、座位で15分毎、臥位で2時間毎の除圧が目安です。体位変換やベッドアップ・ダウンの際の背抜きは、ズレによる圧迫をリセットする目的で、褥瘡発生予防に不可欠なものであることが理解できました。

 

【実践セミナー:薬剤研修】<褥瘡における効果的な薬物療法のために>gaku2

薬剤研修は、1テーブル6名の小グループに分かれ、臀部褥瘡のモデルを用いて実践する参加型の研修でした。その研修では、「軟膏基剤の特性とブレンド軟膏の性状変化の体験」「創の浸出液の量に応じたブレンド軟膏などと病態期の薬効との組み合わせによる外用剤選択」「ズレなどの外力を評価して薬剤滞留障害を防ぐためのテーピングやレストンスポンジを使った創外固定テクニック」「フィブラストスプレーを噴霧したベスキチンWAをポケット内奥部に固定する方法」「創面の洗浄と腱・靱帯の化学的デブリードマン目的のヨードホルムガーゼの充填」などのテクニックを学びました。

各テーブルには、褥瘡治療に経験豊富な薬剤師がチューターとして配置されていたため、細かな指導を受けることができ、満足度の高い研修になっていました。

 

 

 

 

 

【おわりに】

番外編ではありますが、今回の学会参加では、褥瘡の薬物療法をリードする褥瘡サミットの中心メンバーとして活躍している先生(薬剤師)と事前にアポイントを取り、講演準備の合間に、当院から持参した難治患者数名の写真を見ていただく機会を作ってもらいました。当日は、その場に居合わせた前年度学術集会長(薬剤師)にも同席して頂き、当院の皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCN)と共に、現状のケアの指摘や病態評価、薬物療法テクニックなどのアドバイスを頂くことができました。(創面の湿潤変化に応じたブレンド軟膏例、ポケットの内奥へのb-FGF挿入等)

難渋している実患者の状況を伝えながらの検討会で、薬剤師視点も加味された先生方の豊富な経験からくる多角的・最良なアドバイスを頂くことができ、薬剤師の可能な協働範囲もみえてきました。そして、これを当院のWOCNと情報を共有できたことは大きいと感じています。同席したWOCNも、先生方の的確な指摘に治癒が進まず頭打ちとも感じていた現状に、「可能性が開けてきた」と刺激を受けた様子でした。これが実現できたのも、多職種が参加する学会だからこそであり、30分程度の時間でしたが貴重な価値のある時間が持てました。帰院後、頂いたアドバイスの内容は褥瘡回診時に話し合われ、医師にもその合理性が伝わり、新たな指示につながりました。今後の難治患者の治癒への好転を期待したいと思います。これを機に当院での褥瘡治療にも弾みをつけていきたいと思っています。

褥瘡チーム内での関わりは、褥瘡の創の変化が起こっているか、近くに寄ってよく確認することが、何をおいても出発点です。毎週写真を撮れば、褥瘡の治療の進行が目に見えます。創の湿潤状態に適した外用剤の選択を促すことや薬剤滞留保持が薬剤師の支援であり、褥瘡は薬の効果があるのか薬学的な視点で薬剤師が積極的に関わることができる疾患の一つではないかと思います。そこで実績を上げることができれば、薬剤師の存在意義を医師・看護師等に示せると共に、信頼を得られるこgaku3とに違いありません。

一人でも多くの山梨県病院薬剤師会の先生方に御参加して頂きたく、ここにご報告致します。

 

 

山梨厚生病院 朝倉寛達

 

 

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